熱帯夜の睡眠悪化、実は熱中症と同じくらい体に悪かった

論文

夏になると、なんとなく眠りが浅い気がする。朝起きても疲れが残っている。そんな経験はありませんか?

「気のせいかな」と思いがちですが、実はこれ、研究でしっかり証明されていることなのです。しかも、そのダメージは私たちが思っているよりずっと大きいかもしれません。


熱帯夜の健康被害は、熱中症に匹敵する

東京大学大学院と岡山大学などの研究グループが2022年に発表した研究があります。

この研究では、名古屋市民の睡眠データをもとに、夏の暑さが睡眠にどれほどの健康被害をもたらすかを「障害調整生存年(DALY)」という指標で評価しました。DALYとは、病気や障害によって失われた健康な生活年数を数値化したもので、熱中症など他の健康被害と横並びで比較できるのが特徴です。

その結果、熱帯夜による睡眠障害の健康被害は、熱中症の死亡とほぼ同等であることがわかりました。

「眠れない夜が続く」というのは、たんなる不快感ではなく、身体にとって深刻なダメージであるということ。この事実は、夏の睡眠を軽視できない理由として非常に重要です。


睡眠の質が最も悪化するのは、7月

睡眠医学とテクノロジーを組み合わせた研究・製品開発を行う株式会社ブレインスリープ。スタンフォード大学の睡眠研究者・西野精治氏とともに設立されたこの会社が、睡眠計測データをもとに行った季節別の解析でも、興味深い結果が出ています。

1年間のデータを通じて、睡眠の質が最も悪化するのは7月であることが明らかになりました。梅雨が明けて本格的な暑さが始まる時期と重なります。

また、夏は日照時間が長くなることで起床時間が早まりやすく、睡眠時間そのものも短くなる傾向があります。気温の高さに加えて、光の影響も重なることで、睡眠への打撃が大きくなるのです。


何度から眠れなくなるのか? 「25℃」が分岐点

では、具体的に何度を超えると睡眠に影響が出るのでしょうか。

東京大学・岡山大学の研究によると、日最低気温が25℃を超えると睡眠が悪化し始めるとされています。夜間の最低気温が25℃以上の夜を「熱帯夜」と呼びますが、まさにその閾値が睡眠の分岐点でもあるわけです。

近年の日本では、この熱帯夜が増加傾向にあります。「昔より夏の眠りが辛くなった」と感じる方が多いのも、決して思い込みではありません。


対策:エアコンは「寝る前から」つけておく

眠れない夏を乗り越えるために、研究から具体的なヒントも得られています。

大阪市立大学(現・大阪公立大学)の研究では、エアコンを使った寝室の温熱環境と睡眠の質の関係が調べられました。その結果、就床の1時間以上前からエアコンをつけて寝室を冷やしておくと、睡眠の質が最も高くなることがわかりました。

「電気代がもったいない」と寝る直前にエアコンをつける方も多いと思いますが、寝室が十分に冷えていない状態で布団に入ると、寝つきが悪くなってしまいます。

また、就床後4時間の室温が25〜28.5℃の範囲であれば、睡眠の質には大きな影響がないこともわかっています。必要以上に冷やしすぎず、この範囲を目安にするのがちょうどよさそうです。


まとめ:今夜からできること

  • 熱帯夜の睡眠ダメージは、熱中症に匹敵するほど深刻
  • 睡眠の質が最も落ちるのは7月
  • 日最低気温25℃が、睡眠悪化の分岐点
  • エアコンは就寝1時間前からつけて、室温25〜28.5℃をキープする

「暑いから仕方ない」とあきらめていた夏の眠りも、少し工夫するだけで変わるかもしれません。まずは今夜、寝る1時間前にエアコンのスイッチを入れることから始めてみてください。