「寝不足だと仕事が進まない」「ミスが増える気がする」
そんな体感は、気合いや根性の問題ではないかもしれません。
睡眠不足が集中力や作業効率にどんな影響を与えるのかについて、
複数の研究結果をまとめて分析したメタ分析(研究の総まとめ)があります。
今回はその研究をもとに、
睡眠不足で“特に影響を受けやすい能力”を、生活に引き寄せて解説します。
今回紹介する研究について
この研究は、短期間の完全な睡眠不足(48時間未満)が、
人の認知機能にどのような影響を与えるかを調べたメタ分析です。
- 対象:過去に行われた 70本の研究
- テスト数:147種類の認知テスト
- 比較した能力は、次の6つです
- 単純な注意力
- 複雑な注意力
- ワーキングメモリ
- 処理速度
- 短期記憶
- 推論(考える力)
この研究は、単一の実験ではなく70本の研究結果を統合して分析したメタ分析であり、個別研究よりも全体的な傾向を捉えやすい点が特徴です。
対象論文:A Meta-Analysis of the Impact of Short-Term Sleep Deprivation on Cognitive Variables
著者:Julian Lim , David F Dinges
睡眠不足で最も影響を受けやすいのは「注意力」
このメタ分析で、最も一貫して大きな影響が見られたのは
「単純な注意力(集中の土台となる力)」でした。
具体的には、
- ぼーっとする時間が増える
- 反応が遅れる
- 一瞬の注意抜け(うっかり)が増える
といった変化が、統計的にも大きく確認されています。
一方で、推論(じっくり考える力)や記憶については、
研究によって結果にばらつきがあり、影響の大きさは比較的小さいとされました。
「スピード」と「正確さ」、どちらが落ちるの?
意外かもしれませんが、この研究では
- 作業スピード
- 正確さ(ミスの少なさ)
のどちらか一方だけが極端に落ちる、という傾向は見られませんでした。
つまり、睡眠不足になると
速さも正確さも、まとめてじわっと落ちやすいと考えられます。
「早くやろうとしてミスが増える」というより、
集中の土台そのものが不安定になるイメージです。
なぜ作業効率が落ちたと感じやすいのか
研究結果を日常に置き換えると、こんな状態が起きやすくなります。
- 読み返しが増える
- 何度も確認しないと不安になる
- マルチタスクが急につらくなる
- 「やっているのに進まない」感覚が強くなる
これは能力が突然なくなるというより、
睡眠不足によって脳が「注意を維持するエネルギー」を保ちにくくなるためだと考えられます(※この点は研究結果から推測される解釈です)。
仕事や勉強で言えば、
「考えが難しいから進まない」というより、
「集中が続かず、単純な作業でも時間がかかる」状態に近いと言えそうです。
この研究から「言えること」「言えないこと」
言えること
- 短期間の睡眠不足は、複数の認知機能に影響を与える
- 特に集中の土台となる注意力が影響を受けやすい
- 主観的な「眠さ」だけでは、能力低下に気づきにくい場合がある
言えないこと
- 「何時間睡眠なら絶対大丈夫」と断定すること
- 個人差(年齢・生活習慣・慢性的な不眠など)まで説明すること
- この研究だけで、具体的な治療法や改善法を示すこと
今日からできる「作業効率の守り方」
睡眠不足の日に、被害を広げにくくする工夫としては、
- 重要な作業は、集中力が必要な時間帯にまとめる
- チェック工程を仕組み化する(チェックリスト・二重確認)
- マルチタスクを避け、1つずつ終わらせる
といった「環境ややり方の調整」が有効と考えられます。
※ 睡眠不足そのものを正当化するものではありません。
なお、睡眠不足の日に頼りがちなカフェインの摂り方や、
夜のスマホ・ブルーライトとの関係については、別の記事で詳しくまとめています。
「寝つきが悪い…」その原因、コーヒーかも?知られざるカフェインの影響とは
参考文献(一次情報)
- Lim J, Dinges DF.
A Meta-Analysis of the Impact of Short-Term Sleep Deprivation on Cognitive Variables
▶ https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3290659/
